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岸野駐エチオピア日本国大使挨拶
 
   
   

新年賀詞交換会における岸野駐エチオピア日本国大使挨拶

   
 

皆さん、明けましてお目出とうございます。本年も宜しくお願いします。昨年は、メレス首相の急逝、権力の継承、アフリカ連合(AU)委員会委員長の交代等があり、当地もこれらの情勢から目が離せない、多忙な一年でありました。また、アフリカ大陸全体を見渡すと、南北スーダンの緊張の高まりとその後の南北交渉の展開、ソマリアにおける暫定統治の終了と新政権の発足、マリにおける政変とイスラム過激派勢力による北部地域の制圧、コンゴ(民)東部地域における武力紛争、中央アフリカ(共)における反政府勢力の蜂起等、アフリカの平和と安定に関わる事案が次々に起こっています。新しい年を迎え、今年が平和で安定した、そして皆さんが元気で安心して過ごせる一年となることを願っています。

2011年にこの新年会を始めて今年で3回目になります。この会は、エチオピアの各地で活躍される皆さんと一堂に会する、殆ど唯一の機会であります。特に、アディスアベバから遠く離れた地方で勤務されている皆さんは、ひと際ご苦労が多いかと思います。大使館としては、出来る限りの支援を行う所存ですので、何かございましたら、遠慮なくお申し出下さい。役回りは異なっても、皆さんも其々背中に日の丸を背負っておられます。引き続き元気にご活躍頂ければと、心より願っています。
ところで、この会の運営に関し、今年から大使館と日本人会の共催という形にさせていただきました。それは、これだけ大勢の邦人の皆さんが集まる場であるので、在留邦人の親睦と交流を目的とする日本人会と共催することが自然である、と考えたからであります。来年以降もこの共済方式を続けていきたいと思っています。

ここで少し時間を頂き、2013年が我々にとってどのような年になるのか、日本とアフリカという観点から、お話させて頂きたいと思います。

2013年はアフリカにとって大変重要な年であり、また日本とアフリカの関係にとっても節目となる年であります。本年5月25日は、AUの前身である、OAU設立50周年であります。AUは、この日に開かれる記念総会を、50年の歴史を振り返り、その間のアフリカの進歩とOAUの成果をレビューし、そして今後の50年を見据え、アフリカの発展の道筋を描く機会と位置づけています。これと呼応するように、今年一年間AUが取り組むテーマは、「汎アフリカ主義とアフリカのルネサンス」とされています。今年は、ドラミニ・ズマ委員長のイニシアティブにより、議長国エチオピアの下で、AUの今後の進路を方向付けるような重要な決定、強いオーナーシップに彩られた決定がなされるのではないか、と見ています。

このOAU50周年記念行事から1週間後の6月1-3日、横浜でTICADVが開催されます。これは、わが国主導により、5年に一度開催される、アフリカ開発に関する開かれた政策フォーラムであります。1993年に日本がTICADIを開催してから、今年で丁度20年の節目を迎えます。そこで、我々も、TICADVでは、過去20年のTICADプロセスを振り返り、その成果をレビューすると共に、アフリカ自身の変化や新たなニーズを踏まえつつ、今後20年、よりダイナミックなアフリカと共に歩んで行くための政策の方向性、並びに具体的な行動計画を打ち出す方針です。その準備の一環として、3月16-17日には当地でTICAD閣僚級準備会合の開催が予定されています。これは、総勢5-600人が参加する大きな国際会議であります。わが国はTICADのリード役として、ホスト国のエチオピア政府、共催者のAU委員会と協力しつつ、会議の中身の取り纏めは当然のこと、会議のロジスティックスにも十分目配りし、この会議を是非とも成功させなければなりません。皆さんのお知恵とご支援を必要とする局面が今後出てくるかと思いますが、その際には宜しくお願いしたいと思います。

 因みに、アフリカは、2000年から2010年まで10年間に年平均5%を超える経済成長を達成してきています。これは、南アジアに次ぐ高い成長率であります。また、アフリカの対世界貿易は、同じ10年間に3.5倍に増大しています。これは世界全体の貿易の伸び率(2.5倍)を上回る数字です。その間、リーマンショック等もあり、世界の投資が微減する中で、対アフリカ投資は実に5倍に増大しています。これは、単に資源の開発や輸出が好調であったというだけではありません。マクロ経済運営の改善やガバナンスの向上等があったからこそ達成できた成果であります。嘗てアフリカは、「紛争、貧困、AIDSのアフリカ」と言われてきましたが、今や「発展するアフリカ」に転じてきています。これは、TICADVのテーマでもあります。
日本にとっても、東アジアや東南アジア、中東で、過当競争から企業の利益マージンが減少する中で、アフリカは資源の供給源として、日本製品の販売市場として、そしてビジネスの対象として、重要性を高めつつあります。勿論、法制度やインフラの不備は残っています。ビジネス環境にはまだまだ改善の余地があることも事実です。にも拘らず、ハイリスク・ハイリターンのアフリカは、ビジネスにとって残された最後のフロンティアではないか、と考えています。

日本は、これまでアフリカ各地において、経済協力を始め、関係強化のため数多くの地道な努力を行ってきています。資源国を中心に、ビジネス分野でも少なからぬ仕込みがなされております。TICADVという大きな外交の舞台において、これらが大きく花開くことを願ってやみません。官民を問わず、もしアフリカに対して何か新しいことを打ち出すのであれば、今年ほどそれに相応しい時期はないと思います。今年は正に「アフリカの年」であります。また、アフリカ各地において、わが国がこれまで播いてきた種が芽を出し、伸びてきているのであれば、それを大事に育て、大きく実らせていきたいと思います。是非、皆さんとともに力を合わせ、TICADVを盛りたてていきたいと考えていますので、本年も宜しくお願い申し上げます。